ここは雨の国

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95/10/21 19:00:51 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第1夜

 ――君の美貌に恋したのなら、君が美しい限り、ぼくは君のそばにいる。
   君の歌声に恋したのなら、君が歌う限り、ぼくは君のそばにいる――

「新曲? ……っと、ハシカミ」
 おどかさないでよ。私が気づくより先に、カリラが声をかけてくる。地獄耳健在
……か。それにしても、ちょっと言いよどんでみせるあたりが、カリラらしいな。
つい最近名前を変えたものでね。やっぱり、いきなり「ハシカミ」って呼ばれると
ちょっとあせるかも知れない。
 2年ばかり留守をした古巣。ハルカの「教室」まで、ふたりしてそぞろ歩き。

「おかえりなさい」
「ただいま……かな?」
「成人を認められたそうね、おめでとう」
 そう。私は、つい最近成人式を終えたばかり。私たちは19になると成人を迎え
る。迎えるといっても、それなりに関係者が集まったりして、成人を認めるのか?
なんていう儀式めいた話はあるわけだけど。
「ハシカミのことだから心配はしてなかったけど」
「今度はカリラの番よね」
 カリラは、私より3カ月分歳下で、そんなわけで、今度はカリラの成人式。

 さて……。
 私はハシカミという。旅回りの占い師。カリラの成人式を前に、ハルカの「教室」
に帰ってきた。
 ハルカは、私たちの歌の先生。ハルカに仕込まれたおかげで、私は酒場で歌うこ
ともある。成人式で、「ハシカミ」という私の新しい名前をくれたのは、ハルカだ。
 もともとはペペルに占いを教わった。私の本当の伯父。だから私は今でも占い師。
ところが、私が成人を迎える前にペペルが亡くなってしまって、私はハルカに拾わ
れた。こうして、占い師でありながら歌の先生に成人の名前を贈られた世にも珍し
いハシカミの誕生となった次第。

 カリラは、盲目の歌い手。私と同じ時期にハルカについた相棒。カリラに言わせ
ると私の歌は、「理が勝っている」ということになる。確かにカリラは、皮膚感覚
のしっかりした歌を歌う。

「カリラ、ハシカミの方を見てお話ししなさい。ハシカミがいやがってもね」
 「教室」でカリラと雑談などしていると、ハルカがこう声をかける。どうしたんだ
ろう、ハルカ、今までそんなことを言ったことなどないのに。
「そういうものですよ。数カ月とはいえ、ハシカミは先に成人を迎えたのですから、
カリラも失礼のないようになさい」
「はい、ハルカ」
「そのかわり、あなたが成人式を終えたら、私にも、正面を向いて話すことはないわ」
「そんな失礼なことは……」
「だから、そういうものなの。今は、ハシカミに礼を尽くしなさい」
「はい」

 盲目のカリラは、相手を見つめて話すという必要を感じないのか、私と話すとき
には、私の方を見ないで話す。何となく好きなのだけどね、そんなカリラのようす
が。それに、「私の方を見ないで」と言っても、カリラは決して、あらぬ方向を向
くのではない。いつだって、私を右横に見る角度で話す。そして、ハルカや――要
するに、私以外の誰かと話すのなら、ちゃんと正面を向くだけの配慮はしている。
 ああ、そうか。「ハシカミがいやがってもね」って、ハルカは言った。確かに、
私は嫌だな、正面を向いたカリラと話すのなんて。そう、ひょっとしたら失礼なこ
となのかも知れない。でも、カリラが横向きで話すのって、私と話すときだけなの
よ。多分、カリラにとっては、それが一番自然な話し方なのだろう。

 それでもカリラは、正面を向いて話した。ハルカが見ていなくても。そう、まさ
に、「ハシカミがいやがって」も。

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95/10/22 22:44:29 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第2夜

「それにしても、ハルカも思いきったことを……」
「私の名前のこと?」
「そう……ハルカもかなり悩んでいたみたいよ、ハシカミの成人式まで」
「ちょっとぴんとこないけどね」
「もったいない」

 私は、「ハシカミ」という名前をもらった。私たち、ジプシーの神話の主神の名
前。これまで、自分たちの神話から名前を取った例などないのに。私たちは――何
故か――私たちの神話をひた隠しにしてきた。だから、そこから名前を取るなんて
もってのほかなのに。
 あまつさえ、ハルカはナギ――ちょいとした事情から、私の成人式につきあわせ
てしまった作家――に、私たちの神話を公開させたのだ。
 彼の作品は、フィクションの形を取ってはいるのだけど、私はキラ――当時の私
の名前――という実名で登場しているのだし、神話から成人式の立ち入った内容ま
であからさまに書くなんて考えられなかった。おまけに、どうやら、ハルカの方が
ナギにけしかけたらしいのだ。

「ハシカミ、私ね、とても怖いの」
「怖いって? 大丈夫よカリラなら、成人を認められないなんて考えられない」
「それだけじゃないの。私ね――たぶん、ハシカミもそうだと思うけど――見当が
ついてしまったの、成人が認められたとして、私がもらう名前」
「それって……」
「そう、ふふ、笑っても良いわ。ハシカミが、一緒に暮らしてきたハシカミが銀の
神様の名前をもらうなんて、そりゃ、嫉妬の種だわ。同時に思うわけ、ああ、私は、
金の神様かなって。それはそれで怖い。これまで隠しに隠してきた名前を私が受け
継ぐなんて、怖いな。それでいて、そりゃうぬぼれだよってもおもう」
「…………」
「ハシカミの向こうを張って、金の神様の名前もらっちゃったら怖いなと思って、
それどころか、金の神様の名前をもらい損ねたらと思うと、それも怖いし、そもそ
も成人を認めてもらえなかったらと思うとそれも怖いな」
「八方ふさがり?」
「そう」
「でも、カリラくらいね、そんなにあっけらかんと『八方ふさがり』なんて言うの
は」
「そういうハシカミだって、あなたに嫉妬してるって聞かされて、なぐさめも、言
いよどみもしないんだから、良い勝負よ」
「そう?」

 ああ、大丈夫だ。怖い怖いと言ってたカリラが、顔を上げたら、怖いものなしだ
もの。

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95/10/23 21:41:35 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第3夜

「雨ね……」
「うん……」

 はは、はまるな、この会話は。カリラとしばらくはなしていると、どうしてもこ
うなってしまう。特に雨が降り始めたりするとね。
 ここ、カリラのふるさとで、そして、ハルカの教室のある場所は、雨の街と呼ば
れている。私たちが渡り歩く街道がほとんど乾燥地帯を横切っているのに対して、
ここはほとんど毎日雨が降り続く。
 街道を背景にした高山地帯で、雨の街がこのあたりの雨をすべて集めてしまうの
らしい。あるいはまた、街道に点在するオアシスの水源でもある。

 長い沈黙の間に、何かと思い浮かぶ。そして、カリラも同じように、同じ思いを
抱いてくれているのだろうと思うと、妙に安心する。確かめるすべなどないのに。
ああ、そう言えば……。
「こんな会話したことあったわ」
「なに?」
「うん? 成人式の前にね、ナギと話したの」
「ナギ?」
「西の街で知り合った作家さん。成人式の前にね、自分でも考えがまとまらなくっ
て、夜明かししたの」
「迫られなかった?」
「カリラねぇ ^^;」
「ハシカミなら、あり得ないことじゃないわ」
「それはそれとして ^^; 私ね、一晩一緒にいて、『街の明かりが見えるわ』だけし
か言えなかったの」
「それで彼は?」
「ふふ、『そうだね、街の明かりだ』って、それだけ答えてくれた」
「いい話だわ」
「うん。カリラと同じ、ああ、同じことを感じているんだなと思うと、ほっとしたな」
「ごちそうさま」
「そんなんじゃないって……って、またやられちゃったか」
「なに? またって?」
「誘導尋問のカリラちゃん」
「誘導なんかしてないわよ」
「そうよね、本当」

 カリラと話していると、言わなくても良いことまで話してしまう。カリラはほとん
ど話さないのに、いろいろなことを思い出させてくれて、そして、話したくさせる。

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95/10/24 22:22:43 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第4夜

 昼下がりの雨の中で、カリラは「読書」をしている。そうして、わたしは、その
様子をぼんやり眺めている。なんてたいくつな――それでいて、まるで苦痛ではな
いのが不思議。
 カリラの「本」は、ひもを編んだものだ。「オサパ」という、子供の遊びによく
似ている。というよりも、オサパをまねたのだとカリラは話してくれた。

 実のところ、私はオサパを、ジプシーの間で実にポピュラーなこの遊びをしたこ
とがない。私の両親は、「まっとうな生活」を望んだので、伯父のペペルからも、
オサパからも、ジプシーの子供たちからも隔てられて育ったから。
 一方カリラは、小さい自分からこの遊びの達人だったらしい。抜群の記憶力のせ
いもあるだろけれど、本当のところは、カリラが数百種類の綾結びの意味を読みと
ることができたせいだ。
 日がな一日、オサパをもてあそんだカリラの手の感触は、秘められた言葉を伝え
ていた。そして、カリラは、それにヒントを得て彼女だけの文字を作り、蔵書を抱
えている。
 カリラは本を読み、そして書き留める。違うか、まるで編み物でもするように、
言葉を編み込む。

「カリラ?」
「うん?」
「私も読んでみたいな、カリラの本」
「うん。いつかね」
「つれないわね、相変わらず」
「悪く思わないで……それに、これって、言葉じゃないんで、説明しづらい」
「ふうん……」
「わたし、文字は書けない。本当にね、言葉にするのは、ハシカミにはかなわないわ」
「うらやましいな、そのかわりカリラは、言葉なんて、『氷山の一角』だものね」

 カリラと一緒にいて、同じことを考えているんだなって安心できる時間と、カリラ
の、私にはわからない世界がうらやましくなる時間と……。私は少し不安になる。い
つまで私はカリラと一緒にいられるだろうか。

 それでも、私はカリラの様子を見ていた。とりあえず、不安でも、悲しくもなく。

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95/10/25 21:48:47 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第5夜

「ハシカミ?」
「うん?」
「うん。どうして、みんなあんなに人見知りしないでいらるんだろう?」
「うん。とりあえず、『みんな』の中から、私は外しておいてね」
「そうか……」

 ちょっと、ナギのことを思い出してみる。最後の夜、2人で夜明かしして、彼は
私のことが好きだと言った。返事は保留してしまったけど、「今度会うときまでに
何か気の利いた返事でも考えておくわ」って。
 彼は人を憎むことがあるのだろうか?

 閑話休題。カリラの話ね。その気になれば、カリラはこの世で最悪のセラピスト
にでもなれるだろう。私ならお客の表情や、ちょっとした仕草から、真意を見破る。
カリラは、人の呼吸で相手の想いを感じる。決してものごとを暴き立てたりはしな
い。替わりに、誘導する。
 心の中の、ほんの些細な不安やおそれを、カリラは決して見逃さない。わずかな
言葉で――決して、教えるのでも、押しつけるのでもなく――心の透き間に気づか
せてしまう。そして、逃げ道をふさいで、とどめの言葉を投げかける。
 彼女は、言葉の牢屋を使う。

「いやね、ハシカミ」
「またやったわね」
「うん、ハシカミなら、それくらいの勁さは持ち合わせてるものね」
 こうなると、読心術に近いな。

 そう、だからなのかもしれない、カリラがほとんどなにも話さないのは。
 そして、たったひとこで、人を傷つけることのできる言葉を抱えているから、
カリラは、優しいのかもしれない。
 憎んだ数だけ心がすさぶのか、憎んだ数だけ優しくなれるのか、少なくとも、カリ
ラは後者だわ。

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95/10/26 23:54:33 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第6夜

「ハシカミは、いろんな人たちと会ったのね」
「カリラだって……」
「でも、少なくとも私は、『街の人たち』には会ったことがない」
「うん」

 考えてみればそうだわ。そもそも、ハルカのように「教室」を抱えているジプシー
なんていない。それでも、ハルカはたまに旅にでるけど、カリラはお留守番。
 お留守番て言っても、カリラを馬鹿にしているわけではない。正直、わたしは、ち
ょっと驚く。何のことはない、カリラは成人を迎える前から、ここでハルカの代理を
務めているのだわ。

 ジプシーの間で、「教室」といえば、それはここ、雨の街の、ハルカの教室を指す。
そう、ここは、住まいを持たぬジプシーたちの、共通の通過点になっている。そもそ
も、「教室」と呼ばれてはいても、生徒などいないのだ。(もっとも、数年前まで、
私はここの生徒だった) なぜ、「教室」なんだろう。なぜ、ハルカは定住生活を送
っているのだろう。そして、おそらく、だれもがハルカの留守には、まだ成人を認め
られていないカリラを、教室の主人として扱っているのだ。

「そう、私は、ジプシーの間だけで育てられてきたわ」
 類い希な純血種。カリラはそうなのかもしれない。ジプシーの間で育てられ、ジプ
シーの文化だけを受け継いだカリラ。私は、少しだけ身震いする。少しだけ、妙な感
覚におそわれる。なぜ、カリラは、教室から一歩も出してもらえなかったのだろう。
 うん、カリラがそれを望まなかっただけよね。

「うん、ハシカミの解釈は、少なくともはずれてはいないわ」
「ちょっと、驚かせないでよ」
「ハシカミは、二人きりの時は、すぐに息づかいにでるのだもの」
「まいったな」
「でも、私もうれしいのよ。こんなことを言ったら驚くかなって気にしなくてすむか
ら。ハシカミと二人きりなら、感じたままを言える――ちょっと違うわね、感じたま
まを、そのまま感じることができる」
「かいかぶり」
「だから、ハシカミの勁さだって、それが」
「勁さ?」
「話した言葉を、その言葉の通りに感じることができる勁さだわ」
「私だって、他の人と話すときには、ちょっと気を使うわよ」

 これが、カリラとの会話。きれいな言葉だけを選んで話す必要はない。それは、
お互い言葉に鈍感だからではなくて、多分、言葉に対して自由であるからなんだろう。
「やっぱり、言葉にするのは、ハシカミの方が上手ね」
「ごけんそん」

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95/10/27 21:56:32 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第7夜

 ノックの音……。
「どうぞ」と、これは、カリラ。そう言えば、最近ハルカの姿を見ない。
 入ってきた人物をみて、私は声を上げそうになる。それに気づいて、カリラが先
に声をかける。
「初めまして、ナギ」
「…………」
 さすがに驚くナギ。ま、初対面でこれをやられたら、驚くでしょうね。初対面の
名前当て。
「あ、えっと、初めまして……カリラ?」
 ナギもやってくれるじゃない。
「いらっしゃいませ、ナギ」
 私もこのくらい言ってあげても良いでしょう。

「驚かせてごめんなさい。ハシカミが噂をしていたので……それに、あなたを見て、
ハシカミがずいぶんと驚いているようだったので、そうじゃないかなと思って」
「ちょっと、なに? カリラ。そんなに話してなんていないし……ナギ、あ、気にし
ないでね」
「まあ、それは……」
 完全にカリラのペースだ。まあ、いいか、「教室」の主人は彼女なのだから。

「久しぶりね、ナギ」
「ああ、『気の利いた返事』ってのを聞きに来たよ」
「あのねぇ」
「悪い。冗談だ。時にハルカは?」
「最近見かけないわね。ハルカに用でも?」
「ちょっとな」

 そこにカリラがお茶を運んでくる。
「良い会話だわ」
「どういう意味?」
「うん? 気を使いすぎてるわけでもないし、のんべんだらりでもない。そうか、
ハシカミは、ナギとはこんな話し方をするのね」
「もう!」

 正直なところ、私はほっとした。カリラに確かめたわけではないけれど、教室を
街の住人が訪れたのは初めてのことではないかと思う。確かに私の知り合いではあ
るのだけど、カリラがナギを歓迎してくれるとは思わなかった。
 少し話が弾んだ後、ナギは明日もまたくると言い残して帰っていった。
「見送らなくても良いの?」
「気の遣いすぎ!」
「まあ、明日もくるのだしね、彼」
「まあね」

 それにしたって、もう少しいてくれても良いじゃないの。
 何となく、私は思った。

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95/10/28 22:47:46 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第8夜

【ハシカミ】

 目覚めるとカリラはいなかった。カリラの成人式も迫っているし、この時期にい
なくなるのは、当然のことではあるけど。成人式の前に2、3日は雲隠れして、自
分一人で考えをまとめる。その後、鏡――自分のことをわかってくれそうな人――
を相手に、語り明かして、成人式を迎える。これがごく当たり前のパターン。
 とうとうカリラも雲隠れしたか。当たり前のこととはいえ、ちょっと寂しいな。

【ナギ & ハルカ】

「ああ、ナギ、お久しぶりね。昨日のうちに着いていたのですね」
「お久しぶりです。でも、どうしておれなんか呼んだんですか?」
「うまくゆけば、カリラの成人式も記録していただこうかと思いましてね」
「それと?」
「それと? そうね、ちょっとハシカミを煽ってみたくてね、あなたのことをどう
思っているのか」
「良い趣味じゃないですね」
「まあ、誉められたことではないわね。私のわがままには違いないわ。本当は、私
にもわからない……これからどうなるのかね。ただ、3人の物語は、始まったばか
りだけれど、ことによると、ジプシーの歴史の中で、一番重要な物語になるかもし
れないし、ことによると、最後の神話になるかもしれないの」
「最後の神話……3人って誰のことです?」
「ハシカミとカリラと、そして、ナギ、あなた」
「おれはごめんだな、あんたのわがままにつきあわされるなんぞ」
「それでいいわ。ナギ、あなたハシカミのことが好きでしょう?」
「どうでもいいだろう」
「そうね。前もって決められていたことなんてなにもないわ。あなたのことはあな
たが決めればいい。あなたがハシカミが好きで、その気があるのなら、今夜にでも
口説いてみたらいいわ」
「言われなくてもそのつもりだが」
「そう。なにが起こっても、決められたことなんかじゃない。あなたはハシカミに
出会って、あの娘に恋した。ハシカミはあなたをどう思っているかわからないが、
嫌いではない。そして、カリラがどう出るか。そうね、あなたの物語は、あなたの
意志で作ってちょうだい」
「あんた、何を言ってるんだ?」
「ナギ、ハシカミに近づくのなら、これだけは覚えておいで。あなたは、あなたの
思うように生きてゆけばいい。何も、あらかじめ定められたものなんてないのだか
ら」
「あいにくだな、おれは初めからそのつもりだが」
「そう。それならいいわ」

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95/10/29 20:34:04 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第9夜

「やっとわかったよ、ハシカミ」
「なにが?」
「砂漠ばかり渡り歩いているのに、あんたを見ていると、どうも雨女だって感じが
していた」
「雨の街出身だからって?」
「多分な」
「わたし、ここの出身じゃないわ」
「そうか、生まれがどこかと言うだけじゃなくてな、砂漠を歩いているあんたの、
雨のイメージは、決してあこがれじゃなかった、思い出だったよ」
「なるほど、作家の看板しょってるだけのことはあるわね」
「見直したか?」
「ちょっとはね」

 ……まずいな、これは。長い沈黙。なんとか話をそらさなきゃ ^^; …… と、
私はいきなり抱きしめられた。
「ちょっと、なによ」
「気の利いた返事ってのを聞かせてもらおうか」
「なに言ってんのよ……」
 って、結局私は、そのまま目を閉じてしまった。はは、最悪 ^^; なるようになる
わ。そう、これはこれで良かったのかも知れない。ナギは調子に乗って、胸元をまさ
ぐってくる。さすがに、これは払いのけておく。なんとなく、ナギの苦笑を感じる。

「強引ね」
「ああ、言葉が思いつかなくてな」
「私のせりふよ、それは」
「実はな、ジプシー相手に告白するってのが、考えてみればひどく難しくてな」
「どういうこと?」
「ああ、『ハシカミ、あんたが好きだ……』そう言ってみる。そのあとな、結婚して
くれじゃいくら何でも気が早い気がするし、つきあってくれってのも、そもそも一緒
に街道を歩くわけでもないだろうし、てんで、好きだの後が続かないわけ」
「そう言えばこの前も、『好きだ』で言いよどんでたわね」
「はは、速やかに忘れるように」
「あら、しっかり覚えておくわ、告白なんてされたの初めてだもの」
「本当か? 初めてって?」
「ノーコメント」
 ナギはもう一度、私を抱きしめてきた。

 その後、話はさすがにカリラのことに及び、なぜ、わざわざ、ハルカがナギを呼び
だしたのかまるで見当がつかないねということで、同意を見た。
 明日は、カリラは帰ってくるだろうか。そうしたら、鏡――独り言の話し相手――
をつとめるのは、やはり、私だろうな。

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95/10/30 22:25:21 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第10夜

 私はナギに、髪をさわることを許した。そうね、私にだって休息は必要だわ。
 じきにカリラが帰ってくるだろう。それを思うと少しばかり気が重い。うん、気
が重いはちょっと違うか。ナギにでも教わろうかな、どう表現したらいいのか。と
りあえず、今日のところは、お休みだわ。
 思いながら、私の方が少々焦ってしまう。明日は帰ってくるのかしらね、カリラ。
明後日はもう彼女の成人式だというのに。まあ、焦っても仕方ない。カリラのこと
だから、「鏡」なんかとは相談しなくても良いくらいに、考えをまとめて帰ってく
るのだろうな。それに、所詮私は鏡。彼女の思うことを繰り返すだけで良いのだか
ら。はは、もう少し気楽になっても良いか。いつものハシカミらしくないわ、全く。

 「あの日」を思い出すな。初めてナギと夜通し話した夜。夜通し話したというの
とは、ちょっとイメージ違うけどね。何も話さなくても、いらつかない相手っての
は、貴重な存在だわ。

「ハシカミ……」
「なに?」
「横顔って、すごくきれいだねと思って」
 え、それどういう意味よ……と思ったときには、ひっぱたいてた。ごめん ^^;

「だからな、真面がきれいなのは、認める。お世辞じゃなくきれいだ。でもな、
横顔は、とんでもなくきれいだってこと」
 そういうこと言うから嫌われるのよ、あなたは。

 ナギは、その後も弁解混じりで話してくれた。
 横顔誉められてもね ^^; とは思うものの、ここまで言われたら、確かにお世辞
じゃないわ ^^; なんとなく、おかしくなって……そうして、夜は更けていった。
 カリラも明日は帰ってくるだろう。

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95/11/02 20:56:04 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第11夜 その1

 夕方にはカリラ帰宅。まあ、よしとしましょう。
 それよりも私を驚かせたのは、お客の数。ハルカ、ナギ、そして私で結構慎まし
やかだななんて思っていたのに、お客が大挙して押し掛ける。しばらくぶりのポポ
&アキも、あとは、名前なんぞ知らないわよ ^^;
 軽く嫉妬。いいな、カリラは。こんなに大勢集まってもらえて。そして、次の瞬
間少々青くなったり。カリラの「鏡」を務めるとしたら、成人式ではこれだけのお
客を相手にする訳か。はは、酒場で歌ったときの観客より多いかも知れない。
 それに、これだけの数がいたら? 「鏡」を選ぶのはカリラだ。当然、自分のこ
とを一番よくわかってくれるんじゃないかと思う人物を選ぶことになる。それは私
なんだろうと、漫然と思っていたけれど、カリラの「お知り合い」がこんなにいる
としたら、カリラは私を選んでくれるだろうか?

 話は元に戻って、夕方にはカリラ帰宅。
 カリラは、私を捜し当ててくれた。「ハシカミの息づかいを忘れたりはしないわ」
なんて、私を喜ばせてくれる。
 カリラは私を「奥の間」に案内してくれた。
 奥の間……よほどのことがない限り立ち入ることはできない。まあ、今夜の「会
見」から、成人式にかけては、確かによほどのことには違いない。ただ、このあた
りが、この教室の主の趣味なんだろうな。「奥の間」と表札がかかったときには、
そこの奥の間なのだ。表札がかかっていなければ、そこは単なる客間。
 それはそれとして……私は、奥の間で、カリラと向かい合った。

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95/11/02 20:57:04 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第11夜 その2

「怖いな」
「うん?」
「なにも、あんなに集まらなくても良いのに」
「それ言ったら、私だって怖い」
「多分ね、私の味方はハルカとハシカミだけだわ」
「そんなことないでしょう?」
「だといいのだけど……それでね、ハルカはナギを出席させようとしているようだ
けど、私は、きっと、ナギの出席を断ると思う。まだわからないけどね。わからな
いことだらけだわ。どうしてナギを出席させようだなんて考えたのだろう、ハルカ
は。私がそれを望んでないを知っているのに」
「カリラ……」
「あ、ナギのことが気に入らない訳じゃないから、安心して。彼はどちらかと言え
ば、好きだし……正直言って、初めて会った街の住人が彼で良かったと思っている」
「うん」
「でも、どこか嫌なの……怖いのかな、彼に私の成人の姿を見せるのは。成人新規
の場でなかったら、いくらでもお話しできるのにね」
「それが『結論』かな?」
「うん?」
「ハルカの腕を信じるなら……そして、カリラが考えて、そこに突き当たったのな
ら、それが結論なのかも知れない」
「そう言われても、私にはわからない」
「私になど、なおさら」
「ま、いいわ。でも、ナギに伝えて欲しいの……なんで、わざわざハシカミに話し
て、伝えてもらおうとしているのかなんて私にはわからないけどね。正直言って、
彼は好きだし――って、ハシカミは気にしなくて良いからね――嫌っていると思わ
れたくもないし、嫌われたくもない」
「気にしなくても良いってのはどういう意味よ、全く。わかった、伝えて置くわ。
ナギはわかってくれると思うから」
「うん、そうね。」

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95/11/02 21:54:17 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第11夜 その3

「たくさん来たわね」
「ちょっとうらやましいな――私の時は、4人だったんだの、ナギも入れて」
「そうだったわね……ハシカミの成人式は、4人。そしてね、ちょっと思ったの。
それも、ハルカに出会ってから後に知り合った人って、立ち合ってないのよね。
ナギは、ハシカミが直接見つけたのだから別として」
「そう言えば……」
「でも、いくらなんでも、ハルカがハシカミに悪意を持っているとは思えない」
「そう願いたいわ」
「そもそも、悪意を持っている相手に『ハシカミ』なんていう名前を贈るわけがない」
「うん」
「それでね、思ったの。私がナギに抱く感情――彼のことは好きだし、話すのに躊躇
するというわけでもないのだけれど、成人式には出てもらいたくない――と、似通っ
たところがあるのじゃないかと思ってね」
「それは……」
「むろん、ハルカがハシカミを嫌っていると言うわけではないわ。それはわかる」
「肌触りで?」
「そうよ」
「それは……信じるか」
「そうしてよね」

 本当のところ、信じるか……なんて言う必要はなかった。多分、それはまた、私
がハルカに抱いているのと同じ感覚だろうから。そう、私は未だに占い師だ。ハル
カに名前をもらったにも関わらず。それも、いささか過激で――不必要に人を煽るっ
てんで、たまに殴られたりすることもある。
 そんな私を見て、占い師などやめたらどうだと言ってくれる人もいる。ナギは決
して言わなかったけれど。
 私はあれこれと理由を付けて、特に「夢を見ましょう」というスローガンを掲げ
て、頑なに占い師を続けている。ハルカに名前をもらったのにも関わらず。

「そう言えば、ハシカミはたった半年でひとり立ちしてしまったものね」
 それは……。ペペルは「死んだ」ので、彼のもとを追い出されたのは致し方ない。
そう、ハルカに拾われた後、普通なら成人までをハルカのもとで過ごすものだ。少
なくともハルカに反抗した訳じゃない。私はハルカのことが好きだ。彼女となら一
晩中でも話し続けることができる……が、私は半年でハルカのもとを出た。成人の
一年以上も前。

 カリラが、私の「息の乱れ」を感じている。そして、彼女も同じ不安を――ナギ
に対して――抱いている。
 どう考えても、私はハルカが好きだし、カリラはナギが好きだ。4人いれば話は
弾む。だのに、私はハルカのもとには残らないだろうし、カリラはナギを誘惑した
りはしない。
 結局私はこう結論づけた。私はナギに恋したが故に、彼を成人式に同席させたの
だ。カリラは、ナギに好意は持っていても、恋したわけではないので、成人式にま
で立ち入って欲しくなかった。
 なんて、ありふれた解釈かしら。

 もちろん、ハルカに対してもこう言える。ハルカだからだったからじゃない、私
は、ただ単に外の世界を歩きたかっただけ。誰が先生でも同じことだわ。ペペルと
の時は、私が幼かっただけで、彼が亡くならなければ、やはり私は彼のもとを飛び
出していただろう。

 カリラとふたりして、そう納得して……それでも何か忘れているような気もしな
いでもない。まあ、いいでしょう、とりあえず、お互いが嫌いな訳じゃないのだか
ら。

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95/11/02 21:55:45 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第11夜 その4

「でも、良かった」
「なに?」
「ナギが、なかなかいい人で」
「そう?」
「照れないでよ」
「そんなことない」
「ハシカミは嫌な人に出会ったことがある?」
「あるわよ」
「どんな?」
「う……ん、覚えてない ^^;」
「覚えてないの?」
「うん、嫌いな人ってすぐ忘れるから」
「いい性格ね」
「誉めてるの?」
「うん、当然」

「私ね、嫌な人のこと覚えている」
「覚えてる?」
「うん、2人ばかり再起不能にしたしね」
「それは、おだやかじゃないわね」
「16と18の時にひとりずつ」
「ジプシー?」
「そう。街の人って会ったことないもの」
「カリラお得意の言葉の牢屋?」
「うん、ジプシーにはよく効くわ」
「怖い人ね、カリラは」
「そうでしょ、怖いのよ、私は」

 これで会話は終わった。
 多分、カリラの話は、正真正銘の真実だろう。彼女なら、その気になれば、思う様
人を傷つけることができるだろう。鋭利な言葉のナイフ。
 不意に思う。カリラは、自分の言葉が鋭利なナイフだと知っているから、寡黙なの
だ。自分のナイフの切れ味を知っているからこそ、よほどのことがなければ、ナイフ
を振り回したりはしない。そう、よほどのことがなければ。
 だから、カリラは優しいのだ。

 それだけのことに気づいて、私は彼女を見つめた。カリラは少しほほえんで、そし
て、うなずいてくれた。彼女の瞳は、ありがとうと言っていた。

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95/11/03 11:03:08 ERIKA    ここは雨の国 ―― 第12夜

 成人式が始まった。
 思惑通りのことが起こる。ハルカがナギを招き入れる。カリラが参列者への挨拶
に回る。40人からの参列者を一巡り。いちいち、名前を呼んで「ありがとう」を
伝える。盲目であるカリラのデモンストレーションとしては、効果的だ。
 インチキでもしているのではないかと、カリラがやってくる前に、わざわざ場所
を替わるような馬鹿もちらほらいるが、カリラがそんなことを気にするはずがない。

 挨拶も終わり近くになって、カリラはナギの前に立つ。
「ナギ……申し訳ないけど、あなたは退出してください」
 あたりがざわめく。ハルカがとりなそうとする。私の成人式にナギを、「街の住
人ではない」と認定し、参列を許したこと。カリラの鏡である私の恋人であること
(てれるじゃないの ^^;)そして、ハルカ自身の判断で出席を求めたことを。
 それでもカリラはナギの出席を拒否した。2度目の拒否は決定的で、ハルカにも
それを覆せない。「わかってるよ」という風に、ナギは私に目配せすると、奥の間
を出ていった。

「ハシカミ。ありがとう、ここにいてくれて」
 カリラが私の名前を呼ぶと、再びあたりがざわめく。もちろん、私の名前故だ。
街の住人には決して知られてはならなかった神話の名前。あまつさえ、ハルカは宣
言してしまった。私の恋人はナギ――生粋のジプシーではない。

 こうして、どうにかカリラの挨拶が始まる。
 私は「憎しみ」を抱えています。むろん、ここに参列してくださった方々に対し
てではありません。もっと言えば、具体的な誰それに対する憎しみでもありません。
 私が愛するもの……それに対する、無理解故の中傷に対してです。ジプシーであっ
ても、街の住人であっても、私が愛するジプシーの暮らしを、わからないのに中傷
するのなら、私はそれを憎むでしょう。
 私は憎しみを抱えています。私が愛するものに対する思いの強さと、同じ強さで。

 なるほど、それがカリラの言うところの、「人見知り」か。

 ついで、10人ばかりがカリラのことを語る。やはり、神話の名前を贈ったハル
カには、ものを言いたいものの、直接非難するわけにもいかず、「カリラの適性」
なんぞと、言いがかりをつける輩もいないではない。ただ、カリラは私と違って、
たくさんのジプシーたちと話し合っていて、彼らもカリラを知っている以上、それ
は言いがかりでしかなかった。
 最後に非難の矛先は、鏡である私に向けられた。無理もない。神話の名前をもらっ
ておきながら、私はジプシー諸氏とはほとんど没交渉だものね。うんさくさい奴と
思われても、文句は言えない。

 私は、鏡の責務として、昨日のカリラとの会話を――もちろん、ナギの件は割愛
して――再現した。
 そんな私に対して、「ハシカミが鏡で良いのか」という非難がぼちぼちあり、最
後にカリラが収拾した。
「ハシカミは、私が、言葉を選ばずに話すことのできる唯一の人物です」
 カリラの言葉で、私は彼女の鏡として認められた。してみると、いつものカリラ
は、よほど気を使って話しているのかしら。

 そう言ったことがすべて終わって、ハルカが決定を下した。
 カリラは成人を認められ、ユカルハ――金の神の名前――を贈られた。

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95/11/03 11:04:43 ERIKA    ここは雨の国 エピローグ:昔からある場所

 しっかし……ジプシーの女の子なんぞ好きになるものじゃないな。状況を分析す
ると、おれはハシカミに、少々強引に告白などして、ハシカミもそれを受け入れて
くれた……てなことになるはずなのだが、さりとて、明日から一緒に旅をするわけ
でもない。
 確かに、ハシカミが「私はひとりで行く」と断言したことも、おれが、「一緒に
行こう」と言ったこともなかったけれど、やはりハシカミはひとりで――それもま
だ、おれが眠っている間に――旅に出るのだと思う。そう、だからこそハシカミな
のだから。

 成人式が終わった朝、おれとハシカミ、ハルカ、そしてユカルハの4人は、居間
――実は、「奥の間」があったところだ――で話した。
 その朝、ユカルハがまず、おれに謝ってくれた。そして、ハルカまでがおれに謝っ
てくれて、ハシカミがかいつまんで説明をしてくれた。ハルカがナギを同席させよ
うとして、ユカルハがそれを拒否するまでの一連のやりとりは、ハルカが課した試
験――ハルカが出席を求め、鏡であるハシカミの恋人であり、さらに一度は、街の
住人ではないと認められた、おれの出席を拒否することで、ユカルハが、「教室」
の主人としての適正を持っていると認められるのに、いささかの効果はあったとい
うので、おれも悪い気はしなかった。
 この話には、続きがあって、成人を認められた後のユカルハは、おれが教室に出
入りすることを特別に許すと宣言してくれた。
 教室の正当な後継者である、ユカルハの言葉に反対するものはなかった。それが、
彼らの言う、「成人の重さ」なのだろう。

 午後、ハシカミは時間をとってくれた。夜中はユカルハと明かすそうだ。
 2人きりになると、取り立てて話しこともなく、おれはずいぶんと長い間、ハシ
カミを抱きしめていた。
 ハシカミが帰ってゆくと、入れ違いにハルカがやってきて、「ハシカミをよろし
くね」とだけ言い残していった。

 「教室」
 不思議だな。おれは、半分ジプシーだと認めてもらったとはいえ、確かに街の住
人だろう。でも、ハルカやユカルハよりは旅をしている。教室の主は、ほとんど定
住生活をしているのだ。
 それでも……とおれは思う。ハルカもユカルハも、れっきとした、むしろ典型的
なジプシーなのだ。どうしてだかわからないけれど。
 教室はいつからここにあって、代々の主たちは、どのくらいここで過ごしたのだ
ろう。
 おれは、いつかまた、教室を訪れるような気がする。そのときは、ハシカミとも
再会するだろう。そして、ユカルハとハルカがおれたちを迎えてくれる……いつも
と変わることなく。

 多分……おれは思う。ハシカミはおれに会わずに旅に出てしまうだろう。そして、
おれはそれを追いかけたりしてはいけないのだ。今度会うのは、「再会の時」まで
お預けか。
 今もハシカミとユカルハが、密やかな会話を続けている教室を、おれは夜が更け
るまで、ひとりで眺めていた。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
『ここは雨の国』 by 麻野なぎ
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(licensed under a CC BY-SA 4.0)

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