96年6月――7日間トライアル


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04 587 96/06/05 21:33 ERIKA A mail for you. [→index] -------------------------- 96/06/05 21:33:14 ERIKA A mail for you.  彼女からのメール。とうとう「オサパ」を読み解いたという短い報告と、あとは 解読に使ったというチャートの類と、そして、お礼の言葉が乱雑に詰め込まれてい た。  オサパ。この地方の北部から東海岸を経て西進する、古くからの街道地方に散見 される遺物。組み紐細工。まっとうな考古学者は、必ずこうコメントする。 「オサパは、街道のどの時代の文化とも共通する要素を持たない」  彼女は、オサパは文字だったのだろうと考えた。珍しい発想じゃない。同じこと を考えた者は、少なくはないし、事実、文字を持たないとされながらも、簡単な組 み紐で連絡を取り合った文化はいくつか知られている。  また、私自身、かつてオサパが文字ではないかと考え、かなり徹底した解析をし たこともある。  かつて私は、オサパは決して文字ではないと結論した。彼女が、同じように「オ サパ=文字」説を発表したとき、私は自分自身の解析データとあわせて、彼女に簡 単なメールを送った。 「オサパは我々が知っている言語のどれとも共通する要素を持たない」 -------------------------------------------------  彼はメールを受け取ってくれたろうか。ちょっと考えてみる。「お礼の言葉」は あれで良かったかしら。皮肉だなんて受け取られたら、ちょっとつらいわね。  私が研究を始めたとき、彼はいきなり反論を送り付けてきた。実際、彼のデータ は完璧で私としても、「オサパは我々が知っている言語のどれとも共通する要素を 持たない」という事実を認めざるを得なかった。  それと同時に、やはり、オサパは文字であると信じていたかった。  オサパは文字である。けれど、どの言語との共通点も持っていない。簡単なこと。 確かにオサパは文字ではなかった。どの言語とも共通のものではなかった。  私はスタートラインで、かなり大きなアドバンテージを手にした。オサパの言語 としての系譜をたどる――そういった無駄なことをしなくて済んだのだから。 -------------------------------------------------  私は、彼女の送り付けてきたチャートを眺めていた。意味をつかむことは出来そ うだったが、しばらくは、考えないでおくことにした。彼女は嘘やはったりは使わ ない。もちろん、今でも自分の解析結果を信じてはいる。けれど、きっと、彼女は 嘘やはったりを使ったりはしない。意味を読み取るのは、もう少し後でもいいだろう。  少しばかり不思議に思う。古代文字を読み解くために使われるいくつかのチャー トがある。けれど、彼女の送り付けてきたチャートは、そのどれとも違うものだ。 そう、「他のどのチャートとも共通する要素を持たない」  なぜ、彼女は新しいチャートを作らなければならなかったのだろう。  それと同時に、それが、至極当たり前のことのような気もする。彼女はそれを、 オサパを読み解くために使ったのだから。 -------------------------------------------------  オサパは決して文字ではない、けれど、何かを伝えるためのものには違いない。 見えるもので、言葉ではなくて、何かを伝えるためのものが絵画なら、触ることが 出来て、言葉ではなくて、何かを伝えるためのものが、オサパ。  できるだけ素直に――そう言ったのは、誰だったかしら。  そうね。だから、彼にお礼の言葉を贈ったのは間違いじゃない。「文字ではない」 ってのは、とても大切なヒントだった。オサパの手触りの中から最初の文章が浮かん だ。  《ハシカミ→死んだ》《ナギ→《キラ←記憶》》→伝えられるもの  そうね。言葉でないものを普通の言葉で表してはいけない。 -------------------------------------------------  結局、同じ疑問の中にいた。  彼女はなぜ新しいチャートを作ったのだろう。そして、なぜ、彼女は、新しい―― 「他のどのチャートとも共通の要素を持たない」チャートを、なんの説明もなく送り 付けてきたのだろう。  私は、相変わらず、彼女のチャートを眺めていた。  もう一度、彼女の謝辞に目をやってみる。そうだった。嫌みのつもりなら、彼女は 決して謝辞など書かない。だから、これは、彼女の礼なのに違いない。  彼女のチャートを眺める。  私は、いつか、彼女のチャートを理解できるだろうと思う。漫然とした――けれど 割と確かな確信。きっと、自分では、もう気付いているのだろう。 -------------------------------------------------  だから、私はチャートを作った。ううん、まるで詐欺。オサパを書き写すには、オ サパが必要だった。紙に書き直しただけのオサパ。  街道の文化の中で、どの文化とも共通点を持たないオサパ。そうだわ。どの文化と も共通点を持たないからこそ、私が――時代も、場所も、文化も違う私でさえ、読み 解くことが出来たというのなら、実に皮肉なこと。  誰だったのかしら、このオサパを編み込んだのは。                               ERIKA
04 592 96/06/06 23:47 ERIKA a song of wind. [→index] -------------------------- 96/06/06 23:47:15 ERIKA a song of wind.  ―― 雨が降っています ――  最後の「春の風」が亡くなり、雨がそれを弔うと、昨日までは遠慮がちに吹いて いた夏の風が、翌日からは我が物顔で吹き始める。そう、夏は一気に訪れる。  外に出てみると、雨はもうずいぶんと暖かくなっていることがわかる。微かに雷 鳴が聞こえるところなどは、この春最後の雨にはふさわしい。  夏の風と違って、春の風はずいぶんと人懐っこい。もっとも、春の風の言葉がわ かる人というのは、ほとんどいない。だから、いつだって春の風は、一方的に話し かけるだけなのだけど。  それでも、ときどき、ひどくうれしかったり、あるいは、悲しかったりすると、 春の風だって、ひとしずく、涙を流すことがある。涙はクローバーの葉にかかって、 4つ葉のクローバーが生まれる。  春の風は、案外と涙もろい。  そう、本当の所、春は弔いの季節なのだから。  冬の間に、たくさんの生き物が亡くなる。それでも、冬の間は良い。雪が全てを 覆い尽くしてしまうのだから。それに、冬の風は生き残った者たちに、とてもゆっ くり死者を弔うほどの暇を与えてはくれないのだから。  春の風が冬の風を追い出す頃になると、生き残った者達は、やっと弔いを出す。 生まれたばかりの春の風が、最初に見る景色は、野辺の送りなのだから。  春の風は、冬の風をひとりずつ追い出してゆく。けれど、夏の風は、いつまでも 待ち続ける。春の風がひとり残らず消えてしまうのを。  そうして、この春最後の雨が、春の風を弔う。  ―― 雨がやんだようです。いつのまにか、朝になってしまいました ――                               ERIKA
04 593 96/06/07 23:42 ERIKA バースデー・プレゼント [→index] -------------------------- 96/06/07 23:42:10 ERIKA バースデー・プレゼント  今日はお休みだというので、路面電車で街に出かけたピピは、停留所が近くなっ て、降りようとしたとき、側にいた女の子のブローチに気付きました。なんだか見 覚えがあったのです。白い陶器のブローチで、空色の蝶をあしらったブローチなの に、蝶の羽は、少しだけ欠けています。形だって少し変です。丸だとか四角だとか じゃなくて、まるで、割れたお皿のかけらを付けているように見えました。  そう、間違いありません。  ピピは電車を降りるのも忘れて、声を掛けました。 「あ、あの……ひょっとしたら、ララさんじゃありませんか?」 「え、そうですけど、あなたは?」 「あ、ごめんなさい。ぼく、『あさかぜ急便』で働いています。えっと、ピピって いいます」 「そう? それで、何かご用?」 「あの……、そのお皿割ったのぼくなんです。その、ごめんなさい」 「ああ、あの時の、運送屋さん」 「はい」  声を掛けてしまったものの、ピピはどぎまぎしっぱなしです。なんて話したらい いものかと考えながら、お皿を割ったときに、あねご(一緒に働いている、ルルさ んという人で、ピピの先輩なんですよ)に言われたことなんかを思い出していまし た。 「ぼうや(あ、これは、ピピのことですね) なに? 今の音は」 「え、荷物を落としてしまったみたいで……」 「ばか。なに暢気なこと。今の音は皿かなんか割れた音じゃないか」 「え、そんなことって」 「そんなこともこんなことも、そのくらいわからないのか、あんたは」  その後、ピピはララさんの所に謝りに行ったのです。おやじさん(もちろん、所 長のことです)に、お詫びの言葉を良く言い含められて。  荷物は、お客さんに届けるまで開けるわけにはいきませんから、壊れた荷物を持っ ていって、ちゃんと良く謝った上で、荷物を確かめて、弁償させて下さいとよく言っ て来るんだよ……と、おやじさんは、ピピに言い含めたのでした。  ところが、荷物のお皿は見事に割れていたのに、お客さんのララさんは、弁償なん かいりませんと、割れたままのお皿を引き取ったのでした。  帰ってきたピピにそう聞いたおやじさんとあねごは、これは、ララさんがよっぽど 怒っているのじゃないかと、飛んでいったというおまけもありましたっけ。 「あら、そんなに怒ってたわけじゃなかったのに。あのお皿ね、バースデー・プレゼ ントだったの」 「そんな大切なものだったんですね……」 「うん。大切なものだったの」 「ごめんなさい」 「ううん、だから、そんなに気にしないで。私ね、あの人が私の誕生日を覚えていて、 それで、プレゼントを贈ってきてくれただけでうれしかった」 「だから、弁償なんていらないって……」 「そうよ。他のものなんていらないものね」  そうして、ララさんは、しばらく壊れたままのお皿を飾っていたのですが、こんな にきれいなお皿だったのだからって、お皿のかけらの中のいちばんきれいなのを、ブ ローチにして付けているそうです。 「うん。このブローチを見る度に、彼を思い出すの。でも、今日からはそれだけじゃ ない。私のお皿のことで、そんなに心配してくれた、ピピ、あなたのことも、一緒に 思い出すに決まっているわね」                               ERIKA
04 597 96/06/08 21:07 ERIKA 間違い電話 [→index] -------------------------- 96/06/08 21:07:10 ERIKA 間違い電話 「湖沼寮ですか?」 「いいえ、違いますが」 「そうですか……すみません」  夜半に赤電話がなる。ぼくが暮らしていた安アパートでは、当時電話は共同で使っ ていて、おまけに、夜中には管理人がいなくなってしまうものだから、「電話番」な んてものがあった。その夜は、ぼくが当番で、電話を見張っていたわけだけど、いつ もの黒電話ではなくて、赤電話の方が鳴り始めたのには、少しばかり驚いてしまった。  住人の数の関係で、電話番は3週間ほどでまわってくる。その次の電話番の夜、や はり同じように赤電話が鳴った。 「湖沼寮ですか?」 「いいえ、違いますが」 「そうですか……すみません」 「……あ、ちょっと」 「なんでしょうか?」 「何番にお掛けでしょうか?」 「×××−××××に」 「……あ、違いますよ」 「そうですか」  とっさに言ってしまったけれど、赤電話の番号なんてわかるのだろうか。ぼくは、 黒電話で聞いたばかりの番号を回した。回し終わると、赤電話が鳴り始めた。あの番 号は嘘じゃなかったんだ。 「湖沼寮ですか?」 「いいえ、違いますが」 「そうですか……すみません」  次の電話番の時にも同じように電話がかかってきた。 「あの、ここは、風間荘っていうアパートで、あなたの電話は、そこの赤電話にか かってきているんですよ」 「……そうですか。昨日の人もそう言ってたわ。嘘じゃなかったんですね」 「はい、ここは本当に、風間荘で、そこの赤電話に掛かってきてるんです」 「……わかりました。本当に失礼しました」  それが最後の電話だった。  正しい番号がわかったんだろうか? それとも、掛けるあてをなくしてしまったの だろうか。  「時代の要請」だとかで、風間荘にも全部の部屋に電話を引くことになった。ぼく は、今は、電気屋になって、電話工事にやってきた。工事が終わって、もういらなく なった赤電話を、ぼくは、抱え揚げた。                               ERIKA
04 602 96/06/09 22:57 ERIKA 前夜 [→index] -------------------------- 96/06/09 22:57:32 ERIKA 前夜 「やだ。あきらめない」 「そう言ってもな、ゆかり」 「夕祈さん倒れたってんでしょ。わかってる」 「ボーカルなしだぞ」 「うん。平気。あたしだってボーカルやってたもの」 「そういや、そうだな」 「それに、本番の朝しか練習に来なかったの、賢次さんよ」 「古い話を……」 「昔取った杵柄って言わせてもらう」 「そういう使い方するのか?」 「いいじゃない……いいわ。明日の朝までに書き直してくる。サックス抜きで」 「ようするに、夕祈抜きでってことか」 「そう」 「わった、納得できたらやってもいい」 「起きたか?」 「うん。テープ、これ」 「ああ、聞いてやるよ」 「ゆかり」 「なに?」 「あんた、3フレ抜いたのか」 「うん。3フレやると、ソロが入らない」 「だからな、やめとけっていうんだ。あんた、3フレ抜いたら曲にならないだろうが」 「なるよ」 「ならない!」 「なるの……賢次の耳って節穴?」 「ああ、言いたいことはわかる。キーボード半分以上書き換えたんだな」 「わかってるじゃない」 「こんな付け焼き刃で納得できるか?」 「冷静に聞いて。そんなに酷い?」 「まあ……酷くはないがな……。でも、ゆかり、どうしてそんなにコンテスト出たい んだ。あんた、夕祈抜きでちゃんとした演奏が出来ると思ってるほど甘ちゃんじゃな いだろう」 「うん。良くて70点ってとこだと思う」 「で、夕祈がいないんだからって同情してもらおうってわけか?」 「賢次さん?」 「なんだ?」 「あたし、もの投げつけるくらいの気力はあるわよ」 「悪かった。で、どうして、70点だってわかってて出るわけ?」 「聞いて欲しいもの、『風の記憶』」 「出来が悪くてもか?」 「うん。あたし、アマチュアだもの。そりゃ、プライドなんてものあるから、最高の ものしか出さない。夕祈さんいないのなら、夕祈さん抜きで出来る最高のもの。でも 出来る限りの最高のもので充分」 「絶対に、成績悪いぞ」 「うん。でも、きっと伝えられる。誰かに、何かを伝えられたら、いいもの。やめ ちゃったら、何も伝えることは出来ない。70点分でも、私は伝えるの」 「散々だったな、成績」 「うん。それは当然よね」 「それでいいのか?」 「いいの。アマチュアなんだから」 「それが特権ってか?」 「そうそう」 「これからどうする?」 「お見舞い行こう、夕祈さんとこ」 「どんな面さげて」 「もちろん、今年は7位よって顔に決まってるでしょ」 「それで夕祈は喜ぶと思うか?」 「賭けようか?」 「わかった。負けるのがわかりきった賭けはやらない」 「じゃ、来年はがんばろうね」 「あ、70点は今年だけにしたいもんだな」                           ERIKA
04 604 96/06/10 21:10 ERIKA 鬼子母 [→index] -------------------------- 96/06/10 21:10:06 ERIKA 鬼子母 「何してるの!」 「え、いえ……何も……」 「まさか、殺そうなんてことを考えてた訳じゃないわよね」 「そんなこと……」 「ふん。ならいいわ」  良かった。喉に手をかけるところを見られたわけじゃない。そして、本当に良かっ た。見られて。殺さずに済んだから。  ううん。いっそのこと、見つかるのがもう少し遅かったら良かったのかも知れない。 殺さずに済んで、おまけに、私は引き離されて、もう永遠に殺さずに済んだのかも知 れない。  ニュースで言っていた。今日も百人単位で人が死んでいった。そう聞くと、人はな んて簡単に死んでしまうものだろうと思う。生きることへの執念。笑止。遠く離れた 家族がいたって、爆弾ひとつで、あるいは、飛行機が落ちりゃ、人は死ぬ。  でも、「彼」は死なない。何本ものチューブに取りまかれて、身体のあちらこちら に穴を開けられ、流動食やらあれやらこれやらをそそぎ込まれても、彼は死なない。  たとえ、この瞬間、何百人、何千人が死んだとしても。 「ぼくで良かったのかい?」 「どうして?」 「何の取り柄もない、平凡な男だ、ぼくは」 「ううん、あなたが、あなただけが好きだから」  冷静に言って、「平凡な男」だというのは、彼を形容するのに、そんなに間違いじゃ ない。平凡なたったひとりの命を継ぐために、何十人だかのひとが走り回っている。 一方では、誰かが走る間もなく、百人からの人が亡くなってゆく。  ううん。私は決して彼の死を望んではいない。 「ねえ、何か言ってよ。いやよ、私を置いていったりしたら」  そう、私はあなたが好きだから、たとえ、「平凡な男」でも、この瞬間、誰がどれ だけ死んでも、あなたが元気になってくれたら、私はそれで良い。 「ね、わがまま言っちゃいけないんだよ。自分さえよければなんて、考えちゃいけな いよ」  ねえ、それは本当なの? 「彼」が死んだら、この部屋も、お医者様も、看護婦さ んたちも他の患者さんを見てあげられるのにね。この瞬間にも苦しんでいる人を見て あげられるのにね。  わがまま言っちゃだめなの? 「きもちわる〜い」 「なんてことを言うんです」 「だって、気持ち悪いよ。喉のところからなんだか出てるんだもの。痛そうだよ」 「そんな……」  あなた、大丈夫?  あなた、苦しそう。あなた、つらそう。あなた、生きていたい? 今でも。  答えてよ。生きていたいって。  答えてよ。あなたに、生きていて欲しいって思ってるのが私ひとりじゃないって。                               ERIKA
04 609 96/06/11 23:44 ERIKA 雨宿り [→index] -------------------------- 96/06/11 23:44:00 ERIKA 雨宿り  雨が降ってきました。  傘を無くした女の子がひとり、雨宿りにやってきました。公園に一本だけ残った、 小さな木の下です。  えっと……さっきも、誰かが女の子に声をかけていったようです。「そんなことを していると、濡れてしまうよ」とかなんとか。  でも、やっぱり女の子は、木の下で雨宿りをしていました。  そんなに大きな木ではありませんでしたが、女の子ひとりが雨宿りするくらいなら 充分です。だいいち、良くしげった木というのは、本当に雨を通さないものなのです。  しばらくすると、猫がどこからか紛れ込んできました。  また、しばらくすると、犬がいっぴき紛れ込んできました。  そういうわけで、小さな木の下では、女の子と、猫と、犬が雨宿りをしていたので す。  女の子は、右手で猫を撫でながら、もちろん、左手では犬を撫でながら、雨の音を 聞いていました。猫はのどをごろごろいわせて、犬は軽くしっぽを振りながら、女の 子に甘えていました。  このまま雨がやまなければいいのにと、そう、女の子は思ったのです。  雨が降れば、小さな木の下で、だれでも一緒に雨宿りできるのにね。そう、思った のです。                                  ERIKA
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『96年6月――7日間トライアル』 by 麻野なぎ
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Nagi -- from Yurihama, Tottori, Japan.
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