季節外れの、年越しバージョン ^^;

口上書

 え、ファイルを整理してたら、昨年の年末の掛合がでてきました。
 ひさしぶりに、LIVEのオリジナルメンバーの登場です。特に名前は書いていませんが、登場人物は3人。賢次、夕祈、そして ゆかり。時は、95年12月31日です。

「あ、健次、何してるの?」
「あ、まあな」
「あ、いまごろ年賀状なんか書いてるの? どういうつもりなのよ、まったく ^^;」
「あんたは郵政省のまわしものか」
「ってね、それにしたって、いい迷惑だと思うけどね」
「大丈夫だ、迷惑はかけん」
「迷惑はかけないって……」
「自分で配るから」
「は?」
「おれだってそのくらいの常識はあるからな。県外のは昨日のうちに出した。残っ
てるのは半径5キロくらいのばかりだから」
「ちょっと、昨日出したって、どのあたりが常識なのよ」
「そう言う夕祈は?」
「出したわよ」
「いつ?」
「き……昨日 ^^;」
「まあ、そんなところだろうな。ほら、夕祈」
「なによ」
「あんたに宛てたやつだ。受けとっときな」
「ちょっと、直接手渡すってのはなによ、おまけに、まだ年末よ、年末」

「健次さ〜ん。出てた、『バンド・リポート』」
「またうるさいやつが ^^;」
「あ、夕祈さんもいたんだ。なによぉ、健次さんうるさいやつって」
「で、なんか載ってたかおれたちのこと」
「出てる、ばっちり」
「でも、『裏町』(←裏町バンドコンテストといって、健次たちは、コンテストの常
連)なんかを取材に来るなんてどうしたのかしらね」
「なんでもマスターが強引に引きずり込んだらしいな。そもそもが、『ローカル・バ
ンド・レポート』っていうシリーズ自体、マスター(←ライブハウス『プラハ』のマ
スター。裏町バンドコンテストを主催している)が掛け合ったらしい」
「マスター、結構顔広いね」
「そうよね、ただ者じゃないかなとは思っていたけどね」
「マスターに聞かせてやりたいな。で、どうだって?」

――ライブ・アライブは、コンテストの常連である。今年は『地球の記憶』を聞かせ
てくれた。スキャットと朗読と、ワイヤーブラシのドラムだけという、この上なくシ
ンプルな構成であったが、それでも充分聞き応えがある。テクニックだけではなく構
成力もあり、楽しみなバンドである――

「べたぼめだな」
「でしょ、なんたって『地球の記憶』がよかったのよ」
「まあな、たまには、意表を突いてみないとな」
「なによ、意表ついただけっての?」
「まあまあ、ゆかちゃん、おちついて」
「だって…… ^^;」
「まあ、いいじゃない、誉められたんだから」
「まあね」
「でも、最初のライブは良かったわよね」
「そうそう、夕祈さん作曲した『おはよう、みんな』もね」
「コンテストは、1曲だけだからな。ちょっとものたりないってな」
「そうそう、最初のライブの時には本当にびっくりしちゃった」
「どうしたんだ?」
「『おはよう、みんな』で、ゆかちゃんの楽譜はほとんどアドリブだったのよね」
「そうそう、あれじゃいじめだよぉ」
「そうしたらね、ゆかちゃん、私の演奏するメロディそのままなぞるんだもの」
「楽だもん、考えなくて済んで」
「楽だもんってね……本番で初めて演奏した曲の、他人のパートをそのままなぞるな
んて……」
「だからな、ゆかりは天才なんだ」
「納得したわ」
「…………」
「ゆかちゃんったら、照れてるじゃない」

「じゃ、今年もいろいろあったが」
「そうね、一年でこんなになるなんて思わなかった。ライブもあったし」
「健次さんと夕祈さんでき上がってしまうし……」
「ゆかちゃん、そうとう根に持ってるわね」
「うん」
「あちゃ ^^; おれ、ゆかりに根に持たれるようなこと何もしてないぞ」
「ふんだ、何もしてないから根にもってんじゃない」
「もう、あなたたちは ^^; …… じゃ、あとは、片づけでもして、年越しましょう
か」
「あ、あたし、お蕎麦作る」
「できんのか? ゆかり」
「ああ、ばかにしてる」
「だいじょうぶだよぉ、下拵えしたの夕祈さんだから ^^;」
「ゆかちゃん、何もばらすことはないわ」
「いいのいいの、じゃね」

「年賀状書き上がった? 健次」
「なんとかな」
「じゃ、このあたり片づけるから邪魔しないでね」
「わかったわかった」
「で、ね」
「なんだ?」
「今年一年、ありがとう?」
「今年の分だけか?」
「意地悪!」
「まあな、礼はゆかりに言ってやったらどうだ」
「うん、そうね」
「おれたちがこうしていられるのは、ゆかりがおれを引きずり込んでくれたからだ
からな」
「そして、あなたが私を引きずり込んでくれたわ」
「ああ」
「じゃ、いい年を」
「いい年を」


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Nagi -- from Yurihama, Tottori, Japan.
E-mail:nagi@axis.blue